仕事は主に弁護士から直接依頼がきますが、その難易度や提出までのスケジュール、スタッフの経験値、繁閑状況などが考慮されますので、いきなり新人が数十ページの翻訳を頼まれるということはありません。
入所して間もない頃は先輩が担当している翻訳案件を数ページずつ訳し、先輩から訳したもののチェックを受けてから弁護士に回す、という流れで少しずつ実務を学んでいきます。ある程度訳せるようになると、今度は弁護士や先輩に働きかけて、自ら積極的に仕事を取りにいき、場数を踏んでスキルアップを図ります。
案件によっては、一人で対応することもあれば、チームで進めることもあります。数百ページにおよぶ有価証券報告書の和訳では、チームで分担して取り組むことも珍しくありません。同一職種のスタッフは40名ほどいますが、4フロアに分かれていて、私と同じフロアにいる翻訳スタッフは8名。わからないことがあって困っているときなどは、他の翻訳スタッフが手を差し伸べてくれたり、ワークロードが過多になったときには、スタッフ同士で協力しあったり。一人ひとりが翻訳のスペシャリストであると同時に、同じ職場で働く仲間として、お互いに助けあう雰囲気があります。
翻訳した書類は、弁護士が最終レビューを行います。直接フィードバックがもらえる上、第一線で活躍する弁護士の作成する書類に触れられますので、着実にスキルアップにつながります。年次が若い頃は、弁護士からいろいろと修正されることが多かったのですが、最近やっと、自分の翻訳が大きな修正を受けずにクライアントに送られることが増えて、「少しは成長したかな」と感じます。(入所当時に自分が翻訳した書類を今見返してみると、あまりの未熟さに恥ずかしくなります。でも、これは誰もが通る道なのかもしれませんね。)
翻訳の仕事は奥深く、唯一の正解のない仕事です。突き詰めればどこまでも突き詰めることができる、そこが面白さでもあります。10年目の私でさえ「まだまだだな」と思うことも多く、日々、勉強しています。特に、ベテラン翻訳スタッフが作成した書類が蓄積された所内のデータベースで、和英を見比べてみては「ここはこう訳すんだ!」と常に新しい発見があり、本当に勉強になります。尊敬する先輩はたくさんいますが、中でも私の教育担当だった人は、翻訳文が「忠実かつ美しい」ので、私の憧れであり目標です。
そのほかのスキルアップの場として、各分野の専門弁護士が全スタッフを対象に「ランチタイム研修」などを開催しています。英語力を磨くのはもちろんのこと、そういった研修にも積極的に参加することで、法律や案件の知識をさらに深めていきたいと思っています。
私が感じるAMTの最大の魅力は、ワークライフバランスを実現できる点です。翻訳パラリーガルは、女性がほとんどです。私は結婚していますが、仕事と生活はしっかり両立できています。産休や育休を取ってから復職した人も多いですし、育児をしながら時短勤務で仕事を続けている人もいます。長く働き続けたいと考えている方には、良い職場だと言えます。
女性の多い部署ですので、もしかすると人間関係が複雑かと不安に思う方もいるかもしれませんが、そんなことはまったくありません。さっぱりしている性格の人が多く、それでいて温かみもある職場だと感じています。
手に職がつく翻訳パラリーガルは、一生ものの仕事です。ライフイベントがあってもキャリアを継続できるAMTで、今後も、一流の翻訳家を目指していきたいと思っています。
※この記事は2017年3月時点の内容を基にしています。