検索技術等の発達により、法律に限らず、あらゆる領域の基礎的な知識は容易に入手可能となりました。その結果、容易に入手ができない情報を与えてくれる人が重宝され、社会はジェネラリストだけではなく、スペシャリストをより求める時代となってきています。弁護士業界においても、エッジの効いた武器を持つことが弁護士としても期待されています。
この点、スペシャリストになることは、「スペシャリスト」の意味の考え方によっては、一定期間集中してその業務に全面的に取り組むことで達成できうるものであり、学生の皆さんが思っている以上に容易かもしれません。弁護士事務所としてもスペシャリストを所属させることで社会に対するアピールにもなるため、スペシャリストを作り上げる環境支援をしていることも一因として挙げることができます。
しかしながら、私も30代になって思うところではありますが、ある程度自分のプラクティスが確立していく中で、20代のときに比べれば、新しい事項にチャレンジして、これまで扱ったことのない分野にて経験を積極的に積むことについてどうしても億劫に感じる部分がでてくることは否めません。長い弁護士人生というものを考えた場合、どの時点においても、新しい分野に対するスペシャリストになることが必要と考えられますが、そのためには、若いうちに、事前準備をしておく(幅広い分野で実際に経験値を積んでおく)ことが望ましいと考えています。時代の変化にあわせて、あらゆる領域においてスペシャリストとなるための事前準備をしておくという点においても、当事務所は最適な解を提供していると考えています。
リーガルサービスに限らず、あらゆるサービス業に当てはまる問題ですが、「ハネル」(自身のアクションが反発を生む)と「ササル」(自身のアクションが相手にとって感謝・評価される)の2つの視点をもって「相手がどう思うか」を常に想像することは大切です。
弁護士は、法令等の解釈やあてはめに関するアドバイスをすることが多いわけですが、そのような場合、アドバイスの中身が大きく変わることはありません。しかし、アドバイスをどのような表現で、どのような時期に、どのような方法(対面・電話・メール)で伝えるかについては、あらゆる選択肢が生じえます。ここでも、常に「相手がどう思うか」の視点を持つことが大切となりますが、その視点の形成は、自身が弁護士の相手になってみること(リーガルサービスを受ける側になること)が効率的なアプローチの一つです。
私は、2年間、証券会社に出向する経験を得ましたが、リーガルサービスの提供先となることで、相手がどう思うかを体験する良い機会を得ました。当事務所は、業界や地域に限定無く(外国企業への出向のために海外に行くこともあります。)、さまざまな団体への出向の可能性があります。「相手がどう思うか」という視点を養う機会が多く与えてくれるという点は、当事務所の強みと考えています。
弁護士としての業務の大半は、先輩弁護士の指導の下、OJTで行うこととなりますが、入所前にしておいた方が良いと思った事項を以下に記載します。
(1) 書物を最初から最後まで読む
弁護士としての業務で得られた知識は、書物にも記載のない深い事項に及ぶことが多々ありますが、横断的・体系的知識が形成されるとは限りません(現に、私は、会社法上の組織再編のうち特定の類型のものは良く手がけますが、全ての組織再編の類型を万遍なく精通しているわけではありません。)。横断的・体系的知識は書物を隈なく反復して読むことで、身に付くものであり、まとまった時間を確保しやすい学生時代に行うことが適しています。
(2) よく議論する
分かりやすく、かつ理路整然とした議論ができる能力は、より良いプロダクトを作成するための必要となる手段であり、クライアントへの説明や交渉の相手方への説得に際しても重要です。法律の勉強は「覚えて書く」に偏りがちではありますが、実際に弁護士として仕事をする際には、「説明する・説得する」の比重が高まりますので、普段から、周りの方とよく議論することが大切です。
(3) 英語も頑張る
これは試験に合格した後の課題になるかもしれませんが、なかなか日本語だけで案件が完結するという業務の方が少なくなってきました。英語の学習といった場合には単語帳を開き始める方が多いですが、「聞き始める・話し始める」を早い段階から行うことが望ましいと言えます。
※この記事は2019年3月時点の内容を基にしています。
現在ではコーポレート/M&Aをメインとし、ファイナンスでの分野での研鑽も積んでいる。分野は多岐にわたるが、出向時代の経験からプロジェクトマネジメントに関する仕事が多い。