AMTのような大手法律事務所には、プロフェッショナル・サポート・ロイヤーの存在は不可欠だと思います。弁護士は現在約400名おり、今後も増える見通しです。これだけ規模が大きくなってくると、弁護士が他のすべての弁護士の業務の詳細を知り、互いに細かいコミュニケーションをとることは現実的でない場合もあり、ノウハウも効率的に共有しづらくなる。しかしその一方で、クライアントからのニーズは年々高まっており、スピーディーに最先端の情報を提供することが求められています。
弁護士の仕事は、自分たちの積み重ねてきた経験やノウハウがベースになりますので、それを整理して管理し、所内で効率よく共有できるようにすることで弁護士が働きやすい環境を整えると同時に、クライアントからの多様なニーズにも迅速に応えていけるよう、さまざまな仕組みを作っていくのが私の仕事です。
具体的に言うと、各弁護士が作ったさまざまな書類を分類しつつ一元的に管理し、所内の弁護士が先例を効率よく引き出せるようにしておきます。また、それをベースに契約書などの雛型を作ったりもします。その他、法令改正などの新着情報を選別しつつ所内に向けて配信したり、クライアントに向けての情報発信の効率化を図るお手伝いをしたり。情報やノウハウに関する“なんでも屋”的存在と言えます。
普段は原則として、9時から17時まで事務所にいます。ですが、例えば保育園から「子どもが体調を崩した」などの連絡が来たりすると、昼過ぎに退所して、そのまま家で仕事の続きをすることもあります。昼間に子どもの行事がある場合、午前中は家で働き、午後から事務所に出ることも。私たち弁護士は自営業者なので、柔軟な働き方が可能です。外部からも事務所のサーバーにアクセスできますから、家でも仕事はできるのです。
そうは言っても、電話応対などもありますから、基本的には事務所にいます。ある日のタイムスケジュールを紹介しますと、オフィスに来たら、まず法令改正の最新情報をチェックし、整理。それが済んだら午前中は、契約書雛型の作成に取りかかります。いつもは12時頃から昼食を取りますが、この日は「ランチタイム勉強会」に出席。各分野の弁護士が最近の法改正の動向を共有したり裁判例の紹介をする勉強会なのですが、その分野の最新情報を収集できる貴重な機会なので、私は全分野の勉強会に参加しています。そして、クライアントに共有すべき有用な情報があった場合、「さっそく発信しませんか?」と提案したりもします。午後は、特定の法分野に関するナレッジ・マネジメントの企画を考えてその分野を専門とする弁護士と打合せをしたり、弁護士から収集した先例の仕分けをしたり。そうこうしている間に17時になって、子供のお迎えへ。このような感じで1日が終わります。
現在のワークライフバランスは非常に良好です。出産するとインハウス・ロイヤー(組織内・企業内弁護士)を志す女性弁護士も多くいますが、私はフレキシブルな今の勤務形態にとても満足しています。というのも、組織の都合で仕事が発生するわけではなく、自分で仕事を作っていくので、何をどれくらいやるか、いつまでにやるか、などを自分で判断することができるからです。とても自由度が高く、なおかつやりがいもある仕事です。
ナレッジ・マネジメントの分野はやりたいこと・やらなければならないことが山積みで、現在は所内のノウハウを効率的に管理する仕組みを整備することに比重を置いていますが、今後はクライアントへの発信にもっと重点を置きたいと思います。近年は法律事務所間の競争も激しくなっているので、AMT独自の強みを打ち出すべく、より有益な情報を積極的に発信していきたい。海外の法律事務所には、分野ごとにプロフェッショナル・サポート・ロイヤーのチームがあると聞きます。今すぐそこまで整備する必要はないかもしれませんが、いつか一緒に働いてくれる仲間ができたら私としてはうれしい限り。おそらく弁護士志望の女性は今後、ワークライフバランスを考える機会が増えていくと思いますので、「選択肢の一つとして、こういう働き方もある」ということを知ってもらえればと思います。
※この記事は2017年3月時点の内容を基にしています。