私の仕事の中核的な分野はM&Aですが、入所してからすぐに決まったわけではありません。他の事務所では、新人のうちから決まった分野の仕事を担当させるところもありますが、AMTは違います。若いうちは多岐にわたる分野を経験できるのがAMTの良いところ。私も入った当初は、ファイナンス、労働法、独占禁止法など、さまざまな分野に取り組みました。そして2年目ぐらいからM&Aや一般企業法務が面白いと感じるようになり、徐々にそれらの案件が増えていきました。2008年には、パートナー弁護士から出向を勧められ、証券会社のM&A部署に所属することで、M&A漬けの毎日を1年間送りました。その後AMTに復帰し、M&Aの割合をさらに高めていったという流れです。それでもM&A一本に絞られたわけではなく、引き続き訴訟やファイナンスの案件も一定程度続けていました。
自分のこれまでのキャリアを振り返ってみて言えるのは、若い頃から幅広い分野を見ておいて良かったということ。例えばM&Aの取引の仕組みを考えている最中に、「ファイナンス取引では合同会社と匿名組合を用いた仕組みがあるが、これを応用できないだろうか?」といった具合に、過去の経験を応用して物事を考え、クリエイティブな解決策を提案できることもあります。特定の分野の仕事だけを担当していたら、こういったまったく違う分野からヒントを得た「気づき」はないかもしれません。引き出しの数が多い弁護士は、ここぞという場面で、「もう一つ」知恵を出すことができる点で、強い。その意味では、これは採用活動の際にも言っていますが、若い頃から、いろいろな分野を経験するのが大切です。
新人のアソシエイト弁護士は、パートナー弁護士から仕事を振ってもらいながら実務を学んでいきます。私はパートナー弁護士なので、仕事をアサインする前には、「依頼者の期待に応えるための最適な布陣は?」ということを最重視しつつ、アソシエイトの育成を視野に入れてチーム編成を考えます。新人に限らず、各アソシエイトには2名のパートナー弁護士が「チューター」として教育係を務めていますが、やはり自分が「チューター」として担当しているアソシエイトに仕事をアサインすることが多いですね。あとは、所内のイントラネットを見れば、各弁護士の年次や、興味のある分野、繁閑状況などがわかりますから、「このアソシエイトはM&Aに興味があり、今なら時間もありそう。では、声をかけてみよう」といった感じでアサインもします。AMTの場合、部門や部署といった垣根はありませんから、パートナー弁護士は誰にでもアサインできるし、逆にアソシエイトは誰からもアサインを受ける可能性があります。ただ実際上、一緒に仕事することが多いのは、すでに述べた「チューター」を担当しているアソシエイトや、興味関心を示してくれた人ですね。AMTでは、定期的に若手アソシエイトの席替えを行っています。多くのパートナー弁護士と触れあうチャンスを与えることで、いろんな仕事のやり方を覚えてほしいからです。
チーム編成はいろいろで、「パートナー1名、アソシエイト1名」という案件もあれば、「パートナー5名、アソシエイト20名」体制で臨む大型案件も。マンツーマンなら直接指導し、大型案件の場合はチーム全体で新人の面倒を見ることが多いです。
先述したように、私は弁護士としての業務をこなしながら、リクルーティング担当として、弁護士の採用活動も行っています。弁護士が弁護士を採用するのは、この業界ではあたり前のこと。一緒に働くのは自分たちですし、法律事務所というのは、「人」が唯一かつ最大の資産ですから、事務所の将来を担う人材を探すことは、日常の業務と同等か、もしくはそれ以上に大事なことだと思っています。では、具体的にどのような人材を求めているのかというと、実は明確な基準はないのですよ。もちろん、コミュニケーション能力など、それなりの点は挙げようと思えば挙げられるのですが、究極的には、弁護士として「一緒に仕事がしたいと思えるか」どうかという点に行きつくのだろうと思います。
AMTには、本当にいろいろな人がいて、その誰とも仕事をする機会があります。特定の部門などの“縦割りのタコツボ”に入るのではなく、たくさんの先輩弁護士の仕事のやり方を身近で学びながら、自分がなりたい弁護士像を形作っていける。それがAMTの一番の長所。多様で寛容な組織であるAMTには、自主独立の精神で、他の誰にも似ていない、自分だけの「輝き」を追い求め続ける人が向いているような気がします。国際案件も多いので、入所後は、日本にとどまらない、世界を舞台に大いに活躍してもらえたらと思います。
主として企業の合併・買収、合併・買収に関連するファイナンス取引や紛争処理(株式買取価格決定申立事件等)、コーポレート・ガバナンスの分野を担当しております。証券会社のM&Aアドバイザリー部門に出向勤務した経験があり、上場企業の経営統合や株式非公開化案件等に多く関与してきました。企業側において敵対的買収の防衛に関するアドバイスのみならず、買付者・株主側に立って株主提案、プロキシー・ファイトのアドバイスを行うなど、企業支配権をめぐるさまざまな局面での経験があります。また、日本企業が関係するクロスボーダー案件にも多く関与しています。