最年長世代が語るAMTの歴史
「昔から柔軟な発想の人が多かった」

現在、AMTにいるパートナーの中で、私は最年長世代になります。入所したのは1978年。あれから40年以上月日が経ちました。司法研修所を出るときに、さて何をしようかと考えていたところ、知人から「渉外関係を扱う法律事務所で弁護士として働いてみたらどうか。今後、日本の国際化が進み、法律も自由化されていく。そうなると日本企業の海外進出も増え、海外企業の日本進出も増えるから、ニーズも高まるはず」と教えてもらい、なるほど面白そうだと思い、この事務所で働くことになりました。

当時はアンダーソン・毛利・ラビノウィッツ法律事務所という名称でしたが、日本人の弁護士とアメリカの資格を持った外国人の弁護士が若々しく活動している光景が新鮮で、このジャンルは伸びるだろうなという勢いを感じました。とはいえ、弁護士の数はパートナーとアソシエイトを合わせて20名程度。現在の20分の1程度のスケールです。

若くてエネルギッシュな弁護士が多かったですが、高圧的な人や排他的な人はおらず、柔軟な考え方をする人が大変多かった。他事務所に比べて外国のクライアントが多く、異文化と接する機会も多かったため、それを受容できる柔軟性が求められたのでしょう。結果的に、あらゆる状況を読み、状況を判断し、多様な考え方を尊ぶことから、謙虚な弁護士たちが多かった。これは今のAMTにも共通していることかもしれませんね。

ありとあらゆることをやってきた40年

私はこの40年間、弁護士としてあらゆることを手がけました。かつては外国為替管理法や銀行法などの規制が厳しく、外国の金融機関は限られた銀行以外は日本にほとんど入ってこられなかったのですが、私が入所した頃は、そうした法律が一気に自由化され始めた時期。それから日本の経済も大いに発展するわけですが、その間われわれは常に忙しく、日本の企業と外国の企業の間の企業提携をはじめ多種多様な案件を扱ってきました。

やがてバブル景気になり、金融商品がもてはやされ、不動産価格が高騰すれば、それら絡みの仕事も増大。バブルがはじけて不動産価格が暴落し、企業の倒産や金融機関の破綻の時代がきても、その処理にわれわれは関わります。私は日本長期信用銀行の国営化に伴う調査委員会にも加わりました。弁護士はさまざまな資質と能力を用いて、いまだ経験したことのないようなバブル崩壊の後始末を行ったのです。外資系の金融機関による不良債権のバルクセールが流行った時期も、弁護士は引く手あまたでした。

それから約20年間、日本経済が低迷期を迎えた時代もありましたが、それでも法律を必要とする取引は常に増加し続けました。その後のM&Aブームしかり、リーマンショックしかり、あらゆることにAMTの弁護士は関わってきました。

私たちの世代の弁護士はこのように「なんでもやる」のがあたり前だったのですが、最近は「専門分野がいくつかある」というのが弁護士のスタンダードだと思います。時代は変わりましたね。

私だけが知っている
創業者・アンダーソンの素顔

AMTの創業者である故ジェームス・B・アンダーソンは、もともとはアメリカの弁護士です。戦後、東京裁判があり、軍属もしくは軍人で、法律家でもあるアメリカ人が、かなりの人数、日本人の被告の弁護団に入りました。彼らはアンダーソンよりも一世代上の人たちなのですが、それに関連してアメリカの法律家たちが続々と来日。中にはそのまま日本に留まって法律事務所を開いた人たちもいました。アンダーソンもその一人です。今、日本国内で外国人の名前が残っている法律事務所は大きなところではAMTぐらいのものですが、当時は横文字の入った名前の法律事務所が4つか5つはあったと記憶します。

AMTの所内で現在、アンダーソンと面識がある人間は、パートナーではおそらく私一人だけだと思います。私がニューヨークへ研修に行ったときに、AMTの提携法律事務所にいる彼と会いました。そのとき彼はすでにセミリタイアしていましたから、物静かな様子でしたが、体がとても大きくて迫力満点だったのが印象的でした。異国の地で事務所を開くような人ですから、往時はさぞかし活動的な野心家だったのでしょう。

これからますます規模は拡大し、
専門化も進む。しかし、基本を忘れずに。

AMTの規模は今後ますます大きくなり、専門化もさらに進んでいくでしょう。専門性の高い細かなニーズにも対応するべく、われわれはここ数年、経験のある弁護士の採用や、他の法律事務所との統合などで組織力の強化を図っています。今の日本は不動産バブルのような空気もありますが、その後は景気の停滞もあるでしょう。そのときには、法律事務所の再編ということもあるかもしれません。そんな再編の時代になってもしっかりと個々の弁護士が業務を展開できるよう、幅広い分野で、より深い知識と経験を積んで実力をつけておくことが重要で、そのためには若手の育成は最重要事項の一つになってきます。

AMTを志望する若者は知識や分析力に大変優れた人が多いですが、弁護士の業務の大半は、先輩の指導のもとOJTで学ぶしかありません。これから入所する人は法律実務家としては未経験者が多いでしょうから、どうぞ経験豊富なパートナーを大いに頼ってください。どんなに大規模で複雑な事案でも、すべて基本から考えることが必要です。先輩たちは答えがないような法律上の難題を解決するノウハウを余すことなく伝授します。頭の良い若者は、一人で完全な回答が出せるような気になりがちですが、それではまだ不十分でしょう。この仕事で大事なのは、経験値。場数を踏みつつ、謙虚かつ柔軟に人の経験も取り入れて応用しつつ、いつか自力で案件を回していける弁護士に育ってほしいと思います。

北澤弁護士の案件ポートフォリオ

外国および日本の金融機関への銀行法、金融商品取引法等金融規制法(含コーポレート・ガバナンスおよびコンプライアンス関係)およびグループ再編・買収を含む金融関連取引に関する助言等、国内外企業による企業買収取引の助言等、一般事業会社への民事商事法分野での助言等を行っています。また、不動産、商事債権、不良資産の証券化といった日本における証券化案件を取り扱い、株式の新規公開、公募、東京証券取引所への上場を多く手がけました。

男性

北澤 正明Masaakira Kitazawaパートナー弁護士

1976年3月
東京大学法学部 (法学士)
1978年4月
当事務所入所

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